2002-08-01から1ヶ月間の記事一覧
別に私小説でもない。実話でもない。完全なるフィクションだ(と思う)。しかし作家というのは普通の人がどうしてもとっぱらってしまうことの出来ない理性やモラルや羞恥心といったものを、取っ払ってしまったところで仕事をするのだなあ、と、この本を読ん…
この人らしさ、この人の雰囲気、そういったものが一番感じられる作品のように思った。つまり好きな人にはたまらない魅力ということ。行き詰まった新人作家が主人公。(かなりの部分、実話を感じさせるところも……)満足にペンが進まず自分自身を持て余し、そ…
しばらくミステリー系とか深刻なテーマの本が続いていたので、この人の本を読むとなんともホッとして、懐かしい場所に帰ってきたような感覚。いいなあ、こういうお酒・日常・色恋ばっかりのお話。“人参倶楽部”という所謂“クラブ”を舞台にした連作の短編小説…
夏前まで、テレビ朝日でドラマをやっていた原作。日記にも書いたように記憶しているけれど、脚本家としてはけっこう以前から名前で見る人の一人。活動の幅がだんだん広がり、ジャンルとしてもこのところはすっかりミステリー系、そして小説家として名前が売…
ジャン・ジャック・べネックスの『ディーバ』を初めて見たときのワクワクは、僕の映画体験の中でもとても好ましいものの一つだ。その後の作品も、二作目の『溝の中の月』以外はすべて見てきているし、そのどれも、僕自身はとても楽しめた作品だった。といっ…
在日韓国人を主人公にした青春映画(と言っていいかな?)。確か去年の作品ではなかったか。新聞の批評も好評だったし、見てみたいと思っていたのだけれど、結局はビデオでの鑑賞になってしまった。 見てみたいという理由のもう一つは脚本が宮藤官九郎という…
全然予備知識も何も無く、ブックオフで100円だったし、新潮社の翻訳もののシリーズだったし、ちょっとウラのあらすじが面白そうだったので買ってきた本である。しかし読んでみたら大いにあたりでした。実に小説らしい小説だし、じっくり丁寧に書かれているの…
何とも言えず、静かで、寂しく、物悲しい雰囲気。そしてそこが好きな映画。実は2〜3年ほど前にビデオでは一度見ているのだけど、もう一度見たいなあと思っていた。あんまり時代背景は強調されていないのだけれど、ニクソンが出てくるテレビのシーンや、バ…
著者にとって大人の恋愛小説というジャンルに踏み込んだ最初の作品ということになるようだ。ちょっと特殊な世界(花材と花道)を舞台に、長い年月にわたる秘めた想いをじっくりと描いた読み応えのある小説だと思う。前にも書いた(かどうだか忘れた)けれど…
関東大震災は災害という出来事の意味で大きかったが、文学史の中でも近代と現代を分ける節目となっている。地震嫌いの谷崎潤一郎がこの地震をきっかけに、関西へ移住したことは有名だが、この『東京をおもう』という随筆では、そのあたりの経緯を含め、関西…