2002-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『転々』藤田宜永著(双葉文庫)

相変わらず読んでます、藤田さん。99年の作品ということなので比較的新しい小説。映画で言えば、いわゆるB級作品だが、B級にはB級の楽しさがある、というところだろうか。 ひょんなことから借金取りのヤクザと東京を散歩する羽目になった僕の、その2人…

『見知らぬ妻へ』浅田次郎著(光文社文庫)

どれもちょっとしんみり、泣かせる短編集。この人の物語を語らせる上手さには本当にうならされる。どれをとっても実によく出来ているなあ、という印象。短編というのを意識して、語り過ぎないところが特徴だろうか。ええっ、ここで終わっちゃうのか、、、と…

『天使たちの探偵』原籙著(ハヤカワ文庫)

ハードボイルドのお手本のように読んだ、探偵“沢崎”シリーズに短編集があるのはまったく知らず、先日偶然古本屋で見つけたもの。大沢在昌とか北方謙三とかは、鬱屈したものをいつかは爆発させることを予感させる雰囲気があって、そこへ至るまでの抑圧された…

『アンテナ』田口ランディ著(幻冬舎文庫)

こういう怒涛のように圧倒的感覚にひたりながら読むことのできる小説にはなかなか出会えない。デビュー作『コンセント』を読んで、とても気に入った作家の一人だ。週イチのメールマガジン(こちらの方が有名か?)も購読している。この作品も『コンセント』…

幻想のグローバル資本主義(上)『アダム・スミスの誤算』佐伯啓思著(PHP新書)

いわゆる“市場万能”という考え方や“グローバル・エコノミー”のおおもととなるのは、アダム・スミスが示した経済学であるという認識が一般的である。著者である佐伯氏は、この認識について、スミスの代表的な著作である『国富論』(正しくは『諸国民の富につ…

『童貞物語』佐藤正午著(集英社文庫)

どこにでもありそうで、誰にでもありそうな高校時代の一年間を描いた青春小説。思い通りにならないことだらけで、鬱屈し悶々とし、抑圧され、それでもそれなりのはけ口を見つけてはささやかに楽しむことができる、そんな18歳という年頃の雰囲気が読んでい…

『虜』藤田宜永著(文春文庫)

この人らしい恋愛小説のひとつかな、と思って読み始めたのだけれど、ちょっと趣の違う小説でした。アブノーマルと言ってしまうほどの妖しい雰囲気ではないけれど、まあ、普通の人でもちょっと踏み入れてしまいそうな、軽いアブノーマルの雰囲気があります。 …