『ラジ&ピース』

『ラジ&ピース』絲山 秋子著(講談社)テンポというかリズムというか、読んでいて非常に心地がよい文章だと感じる。 ストーリーにおいては、ほとんど何も特別なことは起きないけれど、物足りないと感じることもない。 自分の思うままの道を淡々と生きていく…

『バニラ・スカイ』

『バニラ・スカイ』キャメロン・クロウ監督(2001年米)ストーリーは、ざっと説明するのが難しいような内容なので割愛。 途中からかなりSFチック(?)になるのだけれど、実際のところ最後まで見終えても、解釈が幾通りもあって、あれこれと考えさせられる…

『蛍』

『蛍』吉村昭著(中公文庫)9編の短編からなる短編小説集。最初の一編を読み終えたところから、これは何なのだろう、という「微妙な違和感」のようなものを感じた。面白い、とか、つまらない、という感覚とは別の次元のもの、それが何なのだろう、何からく…

『ジェイン・オースティンの読書会』

『ジェイン・オースティンの読書会』ロビン・スウィコード監督(2007米)本を読む、という行為を物語りの中心に据えた映画である。他の本好き(読書好き)の人はどうだかわからないが、少なくともボクは、けっこう人の読書スタイルに関心がある。 “読書スタイ…

『反貧困』湯浅誠著

『反貧困』湯浅誠著(岩波新書) <本文作成中>

『風味絶佳』山田詠美著

『風味絶佳』山田詠美著(文春文庫)旅行には必ず本を持っていく。乗り物での移動には欠かせないものだ。特に飛行機では窓から景色を見る楽しみがないこともあって、本を読むことは多い。 このところしばらく読書らしい読書をしていなくて、軽めの読み易そう…

コニカミノルタプラザにて写真展

木村伊兵衛賞受賞作品展 岡田敦「I am」 志賀理江子「CANARY」「Lilly」本当はしっかり写真集やブックも目を通してから書くべきなのだろうけれど、30分しか時間がない中で、3つの展示を見て回ったので、展示されたものしか見ていません。「I am」は、 展…

『さよなら、日本』柳原和子著(ロッキングオン)

(後送予定)

『街道をゆく13 壱岐・対馬の道』司馬遼太郎著(朝日文庫)

このシリーズを読むと、実際に自分の目でその地を見て、自分の足でその地を歩きたくなってしまう。今回もやはり読みながら、いつかここへ行ってみたいということを感じていた。冒頭、作者の私的な回想から始まるところが印象的だ。京都の小さな地方新聞社で…

『オンリィ・イエスタディ』志水辰夫著(新潮文庫)

先日大腸内視鏡検査を受けることになり、事前に診察と予約、そして当日の注意点を聞いたところ、準備の時間が長いですから、読むものなどお持ちくださいね、と言われていた。あまり心地よい環境ではないかもしれないが、独りの時間を読書に費やすことができ…

『バベル』(2006年米 WOWOW)

なかなか見ごたえある映画でありました。色々考えさせられるという意味では複雑な映画という感じでもあります。構成としては最近流行りの、いくつかのハナシが同時に進行していくという作りになっています。 で、作品として考えたときに、これは何の話なのか…

『Workshop2B 写真展』(渋谷ルデコ)

今回も恒例になった“ルデコジャック”で4フロアを借り切って、19期20期のワークショップ終了展、他二つの写真展。渋谷で山手線のホームから新南口を目指していくと、昨年の写真展の時のことを思い出した。あの頃は9月末だったけれど、また暑くてギャラ…

『街道をゆく1 甲州街道/長州路ほか』

『街道をゆく1 甲州街道/長州路ほか』(司馬遼太郎著 朝日文庫)折りしもつい先日2月12日が司馬遼太郎の命日(菜の花忌)であった。『街道をゆく』の連載は、1971年(昭和46年)に週刊朝日で始まっている。最初に単行本としてまとめられた記念すべ…

『The POLICE Live in Concert』(2007.2.13 東京ドーム)

再結成&ワールド・ツアーの話を聞いたときには、どんなに嬉しかったことか。日記を読み返してみると、そのニュースを聞いたのはちょうど一年前、昨年の2月13日のことでありました。そして待つこと1年、その日がやってきました。30代頃までは、聴きた…

『クラリネットアンサンブルの午後』(第一生命ホール)

ワタシのクラリネットの師匠を含めヤマハのスクールのクラリネット講師による演奏会。昨年秋に第一回があったのだが、その時は吹奏楽のイベント前で練習を休めず今回二回目にして聴くことができた。最初が全員演奏でのバッハ『トッカータとフーガニ単調』、…

『水の流れる町で 〜その2〜』

遠藤志岐子第二回針穴写真展いつどのようなきっかけで見つけたのか、もう忘れてしまったのだが、かなり昔からホームページを時々拝見していた方。お気に入りには入っているけれど、1〜2ヶ月に一度くらいの閲覧なので、先週たまたま見て現在個展を開かれて…

『王のいた村』杉山次郎太写真展(コニカミノルタプラザ)

ワークショップの方の写真展におじゃまする。大全紙、スクエア、モノクロ、自然な目線の写真らしい写真。被写体となった人物の表情も自然で見ていて気持ちが落ち着くような感じ。作者にお会いしてみたかったが残念ながら不在。

『心に龍をちりばめて』

『心に龍をちりばめて』白石一文著(角川書店)レビューには書いていなかったけれど、数ヶ月前には『永遠のとなり』が新刊として出ているので、思いがけない続けての新刊のリリースだった。新刊なので内容についての話は極力割愛します。 初期の頃と同じ角川…

『結婚の条件』小倉千加子著

『結婚の条件』小倉千加子著(朝日文庫)どこの何をきっかけに、この人、この本に行き当たったのか、すっかり忘れてしまった。社会学というのは、とても面白い学問だと思う。社会で起きている状況や現象を『なぜ』という部分から解き明かしていくこと。特に“…

『海と日傘』松田正隆作(あうるすぽっと)

平田満と竹下景子という組合わせ。 たまたま今年の春頃にNHKのドラマで『こんにちは、母さん』の中でちょっとした接点があったはず。その興味があったのと、東池袋に新しくできた劇場というのもあって、チケットを取ってみた。 松田正隆という人の脚本で…

『百万回の永訣』(柳原和子著)

『百万回の永訣 −がん再発日記−』柳原和子著(中央公論社)ガンという病気は、発見された部位や程度によるけれど、今ではもう一般的にも、決して治らない病気、という認識はなくなっていると思う。それでもやはり、もし自分に、あるいは自分の家族に、ガンと…

『草の花』福永武彦著

『草の花』福永武彦著(新潮文庫)こういう雰囲気の小説を読んだのは随分久しぶりのことだ。 大学生の頃に、何冊かこの著者の本を読んでいるのだが、ちょっとしんどかった記憶が残るだけで、内容に関してはまったく記憶していない。少し背伸びをした読書で、…

『沖で待つ』

『沖で待つ』絲山秋子著(文藝春秋社) 芥川賞受賞作。『勤労感謝の日』と『沖で待つ』の二つの作品による小説集。二編で一冊にはなっているけれど、長さとしては短編という印象だった。それでもこの二編が与えてくれる満足度(インパクトと言ってもいい)は…

『誰かに似ている』

『誰かに似ている』杉山隆男著(新潮社)ノンフィクションの書き手としては、確固たる地位を確立しているといっていいだろう。その氏の始めての小説集となる短編集である。女性誌に連載し、2002年に発行されているからもう5年ほど前のものだ。 確か1年…

『いつか読書する日』

見始めると、風景になにか見覚えがある。田中裕子が牛乳配達で駆け上がり、駆け降りる階段に白い縁取りがありその脇に白いパイプの手すりがある。そんな細い長い階段が続く風景は長崎の街だ。 実はワタシ、田中裕子のファンである。どこまで遡るかというと、…

『遠い朝の本たち』須賀敦子著(ちくま書房)

本、あるいは読書をめぐるエッセイである。実は時々読んでみようと、何度か手に取ったことのある著者の本なのだが、なかなか実際に読むには至らず今回読んだこの本が始めてだった。 1927年生まれというから、昭和2年、自分の母親と同じ世代である。とい…

『きれいな肌』(新国立劇場)

3週間ほど前の新聞に新国立劇場の広告が掲載されていて、ふと見かけて行ってみようという気になった。 パキスタンの作家の書き下ろし作品、“西洋社会におけるイスラム教”がテーマとなっていること、一度ナマで見てみたかった中島朋子という女優、そんなとこ…

『ブローティガンと彼女の黒いマフラー』

『ブローティガンと彼女の黒いマフラー』川西蘭著(トレヴィル)ブローティガンの小説はまだ読んでいない。ずっと気になってはいるものの、なかなか手をつけていない。 いつか読むつもりでいるうちに、同じように気になっていた、こっちの小説を先によむこと…

『対話の教室』

『対話の教室』橋口譲二・星野博美著(平凡社) −あなたは今、どこにいますか?−2000年に行った写真のワークショップについての記録。 写真のワークショップといっても、読み終えてみると、写真は目的ではなくて手段のほうだろう。目的は、たぶん、自分…

『イルカと墜落』沢木耕太郎著

『イルカと墜落』沢木耕太郎著(文藝春秋社)読んでいてまず思ったのは、文体がとても心地よいということだった。 ムダがなく、凝縮された言葉、しかし肩の力は抜けていて、柔らかい。ああ、いつかこんな文章が書けたらなあ、と思う。内容も面白く一気に読ん…