2003-01-01から1年間の記事一覧

『モンスーン・ウェディング』(2001年インド)(ビデオ)

いわゆるインドの娯楽映画というジャンルについて、全く未知であるので、唄って踊ってというお楽しみ付きの映画の中で、この映画がどの程度オーソドックスなものなのかが判りません。しかし、初めて見た感想としては、もっと様式的なインド映画というパター…

『蕎麦屋の恋』姫野カオルコ著(イースト・プレス)

最近作の『ツイラク』が、あちこちでとてもよい評判なので、ちょっと関心を持った作家である。短編集として刊行されたのは新しいが、収録されている作品は比較的古いもののようだ。5つの短編による短編集だが、タイトルにもなっている『蕎麦屋の恋』という…

『ぐろぐろ』松沢呉一著(ちくま文庫)

先日のレビューに書いた、松沢氏の今月の新刊の一冊。といっても、もちろん書き下ろしでもなければ、ずい分古いもので、『Burrn!』というロック系の雑誌に連載されていたエッセイを中心にまとめたもの。本人も書いてはいるのだが、音楽とはまったく関係もな…

『紫の領分』藤沢周著(講談社)

以前からちょっと気にはなっていた作家だったが、これが始めて読む作品。正直言って、ちょっと読みづらいタイプの小説だった。内容、文体、感覚、どれもちょっと引っ掛かる感じがある。そういう主人公を描いたということで意図したものなのかもしれないし、…

『チョコレート』2002年(米)(ビデオ)

2002年のアカデミー賞で、ハル・ベリーが最優秀主演女優賞をとった作品。 簡単に書くと、死刑囚の妻と、死刑を執行する側である看守の男が偶然知り合い恋愛関係になる、という話なのだが、内容的にもかなりシリアスな作品である。演出は控えめで描写も淡…

『昨晩お会いしましょう』田口ランディ著(幻冬社)

5つの短編からなる短編集。最初の4編はどれもセックスの描写がかなりのウェイトを占めていて、しかも激しい。ここまで書くか、という感じを持ったし、フィクションであれノンフィクションであれ、例えばもしもこういう文章を日記サイトにでも書いたら、即…

『風街』白石文郎著(角川書店)

先日、作家の白石一文氏のことをネットで調べていたら、双子の弟が作家であるということ(この白石文郎氏)。父親も同じく作家(白石一郎氏)であったということを知った。兄弟で同じ出版社の就職試験を受け、ふたりとも最終面接まで残り、それなら弟を、そ…

『MAGNET』山田詠美著(幻冬社)

随分久しぶりに山田詠美を読んだ気がする。久しぶりに読んで、あらためてスゴいなあ、 と思う。9つの短編からなる作品集なのだが、まず最初の『熱いジャズの焼き菓子』という短編を読んで、その内容にも描写にも圧倒される。 真実と嘘、正義と欺瞞、愛情と…

『小説の秘密をめぐる12章』富岡多恵子著(文藝春秋)

小説を書きたい(あるいは書きたいと思っている)人に向けた、小説指南ともいえる本だろう。小説の秘密というものを知る面白さもある。例として取り上げられている作家が、多少古いのではないかな、という感じもしないではないのだけれど、その秘密は古い・…

『ルームメイト』村田喜代子著(文芸春秋)

先日読んだ佐藤正午氏の『ありのすさび』の中で取り上げられていた本。そう書かれてしまっては読まないわけにはいかないでしょうという内容であったのだ。ちょっと引用してみましょう。『村田喜代子のその小説「ルームメイト」を読んだときには本当に悔しく…

『ハルディン・ホテル』ナイロン100℃(本多劇場)

以前から興味があったのだが、今回始めて見たナイロン100℃という劇団。客層はというと、なかなか微妙ですが、最近見ていた色々な芝居と比較してみると結構若いなあ、というカンジだった。初めてなわりには“おやくそく”みたいなもの(あるいは雰囲気)が、あ…

『ありのすさび』佐藤正午著(岩波書店)

あとがきの中で、前のエッセイからは百万年たってしまった、と著者が書いている通り、それだけの時を感じるような印象の違いはある。佐藤正午という作家の変化というよりも、物事を見る目とか、それを捉える心のありよう、あるいはそれを表現するときの穏や…

『チャイ・コイ』岩井志麻子著(中央公論社)

そのストレートさに圧倒されるような官能・ポルノ小説とでも言おうか。ベトナムのレストランで、突然興味を持った給仕の男性を愛人にしてしまうという展開なのだが、ちょっと興味を持って調べて見るとかなりノンフィクションなお話のようなのですね。本人自…

『光源』桐野夏生著(文春文庫)

この人の本にしては、さほど話題にならなかった小説なので、まったく予備知識もなく読み始めた。しかし、読んでみて改めて思うのは、やはり本来小説というのは、そんなふうに、読むべきものなのだなあという感想である。 小説の舞台は映画製作の現場だ。冒頭…

『熟女の旅』松沢呉一著(ポット出版)

なんだかな、というタイトルですが、最近お気に入りの松沢呉一氏の1999年出版の著作。この人の本、どれを読んでも面白いです。 ところで"熟女"というのはパソコンで変換しても出てきません。それなりに聞く言葉のような気はするのですが、未だ世間一般に…

『ベトナム現代短編集Ⅰ』アジアの現代文芸シリーズ((財)大同生命国際文化基金)

8人のベトナム人作家による各1編ずつを集めた短編集である。先日読んだ『虚構の楽園』という長編がなかなかよい小説だったので、日本語に翻訳されているものは数えるほどしかないベトナムの小説なので、この際、手に入る限り読んで見ようと思ったのだが、…

『夢の泪』井上ひさし作(新国立劇場)

いつかは見てみたいと思っていた、井上ひさし作の舞台をはじめて見た。東京裁判をテーマにした3部作の構想というのがあるらしく、これはその第二作目にあたるものらしい。テーマはけっこう重たいものの、芝居の雰囲気はミュージカル仕立てのなかなかテンポ…

『感情教育』中山可穂著(講談社文庫)

といわけで、引き続き中山可穂さんの小説です。やはりこちらもレズビアンという関係における恋愛を描いた小説です。多分に自伝的な匂いが漂う小説なのですが、どこまでがフィクションかどうかというようなことをあまり気にするのはヤボなのでしょう。三部構…

『白い薔薇の淵まで』中山可穂著(集英社文庫)

初めて読む作家である。そして読み始めるまで、フツーの恋愛小説と思っていた。まあ、フツーではないのかと言うと、女同士の恋愛であるというところがちょっとだけフツーでないくらいで、やっぱりあくまで恋愛小説なのであった。途中で、それでこのタイトル…

『きみは誤解している』佐藤正午著(集英社文庫)

文庫化されていない未読の3冊のうちの一冊がようやく文庫化されたので、さっそく読んでみました。 本を読むときにあとがきから読むという人がけっこういます。僕の場合は、ちらっとあとがきの内容を見て、先に読んでもだいじょうぶかどうかを判断して、その…

『萩家の三姉妹』 二兎社公演(世田谷パブリック・シアター)

このところすっかりお気に入りになった永井愛さん脚本の芝居でした。再演になりますが、僕自身は初めて見る舞台。とにかく実によく出来た面白い芝居です。 3姉妹の男女関係(恋愛)を中心に進む物語ですが、3人それぞれの恋愛が、まったく違った立場でのも…

『ミッドナイト・コール』田口ランディ著(PHP文庫)

働きざかりの20代から30代の女性を主人公とした短編小説集である。意図してのことだろうけれど、どこにでも居そうな、極く普通の人間を主人公とした物語だ。そしてそんなどこにでも居そうな女性の、どこにでもありそうなお話が、とってもよく出来ている…

『万治クン』永倉有子著(集英社)

永倉万治さんが亡くなって3年になる。こういう本が出るとは知らず、たまたま書店でタイトルを見て、“おお!”と驚き、即買ってしまいました。永倉さんが書いていた小説は、もちろんフィクションではあるけれど、どことなくその主人公の雰囲気がきっと作者自…

『姫椿』浅田次郎著(文春文庫)

ファンタジーに属する短編を集めたものと言えるだろうか。といっても、ファンタジーとなる部分はお話の中では、仕掛けに過ぎないので、ファンタジーとして読んだ感覚というよりは、普通の短編小説を読んだ感覚に近いものがある。 うまさは相変わらず。

『草にすわる』白石一文著(光文社)

『草にすわる』と『砂の城』という二編の中篇からなる小説集。1958年生まれというから、一年違いの同世代の作家でもある。デビュー作の『一瞬の光』から、どれもずっと読みつづけている(といっても、これで5冊目だったかな)が、一貫して感じられる、…

『虚構の楽園』ズオン・トゥー・フォン著(段々社)

以前読んだ『ベトナムの人』(2003年6月30日参照)の中で、この本のことが書かれていて、機会があれば読んでみたいと思っていた。1988年にベトナムで出版され、日本語訳は1994年に出版されている。充分に現代ベトナム文学といえる新しい作品…

『黄金の国2003』 離風霊船公演(ザムザ阿佐ヶ谷)

初めての劇場(というか小屋といったほうがよいか)の、ザムザ阿佐ヶ谷という場所。靴を脱いで板の間の段々のような客席で見る。離風霊船の芝居は最初に見てからもう15年くらいになるだろうか。当時は、芝居が終わって劇場を出ると、今、目の前で芝居を演…

『アルマジロの日々』永倉萬治著(幻冬社)

長編としては遺作になるだろうか(『ぼろぼろ三銃士』は実質的に奥さんとの合作なので)。2000年5月発行の書き下ろし作品である。ファンであるわりには、僕自身、作者の詳しい経歴を知らないので、どこまでが事実なのかはわからないけれど、物書きとし…

『髪結いの亭主』1990年(仏)(ビデオ)

だいぶ前からいつかは見たいと思っていた映画で、ようやくレンタルDVDで見ることが出来た。80分と少しという、映画としてはかなり短めの作品だろう。 何故見たいと思っていたかについては、誰かのエッセイ(だったかコラム)にこの映画のことが出てきた…

『流砂』 藤田宜永著 (講談社)

長編ではあるけれど、とある一編の映画を見るような恋愛小説です。若い頃、というか、まだ恋愛というものについては子供だった頃、恋愛感情というのは宇宙の広がりように果てしの無いものだと思っていたことがあった。若かったなあ。今から思えば、自分なが…