2004-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『二十世紀を見抜いた男 マックス・ヴェーバー物語』長部日出雄著(新潮社)

奥付を見ると2000年7月となっている。多分その頃に買った記憶はあるので4年越しの読書ということになる。といっても買ってすぐに五分の一ほどまで読んで、そのまま放置。今回改めてまた最初から読み直して読了というわけだから、積読が長かったという…

『フリドニア日記』猫のホテル(本多劇場)

昨年初めて見たナイロン100℃の『ハルディン・ホテル』という舞台が、ちょっと不思議な感じで、この人の脚本をもう少し見たいと思っていたので、今回、劇団や演出は異なるものの、台本がケラリーノ・サンドロビッチということで、見てみました。ナンセンスと…

『透明人間の蒸気』野田秀樹作・演出(新国立劇場)

先日の日曜日に続いての新国立劇場だが、今回は中ホール。 出し物は懐かしい夢の遊眠社時代の『透明人間の蒸気』。初演は1991年の後半ということだが、内容はほとんど忘れてしまったものの、確かに見たという記憶だけは残っていた。 冒頭の台詞で、目が…

『見えないドアと鶴の空』白石一文著(光文社)

まず、ひと言感想を言うと“不思議”な小説だ。今までの作品にある、著者らしい“真面目さ”を持ちつつ、今回はリアルなものを離れて新しい表現に挑戦している。しかしそれを違和感なく読めたのは、やはりこの人ならではの力強さのようなものだろうと思う。スト…

『こんにちは、母さん』永井愛作(新国立劇場)

下町風の縁側のある日本家屋の茶の間。左側階段がしつらえてあり、その上には2階の物干し場。右手の壁沿いに三軒の2階部分がひしめくように並ぶセット。暗転してビートルズの“抱きしめたい”が流れるオープニング。前回見た萩家の三姉妹の出だしが、ぴんか…

『欠陥住宅物語』斎藤綾子著(幻冬社)

ずい分と昔だが、(ネットで調べてみたところ1990年)この人の小説で、けっこう話題になった『愛より速く』という小説を読んだことがあった。女性が性欲やセックスなどについて赤裸々な文章を綴るという意味では、けっこう先駆的な作家であって話題にも…

『その場しのぎの男たち』東京ボードヴィルショー(東京芸術劇場)

池袋の東京芸術劇場はクラシック専門(だったと思う)の大ホールも小ホールも行ったことがあったが、中ホールというのは今回始めてだった。しかし、お役所(自治体)が立てたこうしたホールの中ホールというのは、新国立劇場もそうだが、これで“中”かい、と…

『血い花』室井佑月著(集英社文庫)

血い花(あかいはな)と読みます。先日読んだ『Piss』より少し前に書かれた短編集。『Piss』は意識的にポップというか、今ふうな感じを意図的に書いたようなところがあったけれど、この中にある短編は、それよりはもう少しだけ文学的な匂いが強い。 …

『アメン父』田中小実昌著(河出書房新社)

保坂和志さんからの本繋がりの読書である。 田中小実昌サンは、昭和54年の上期の直木賞を『香具師の旅』という作品集に収録された短編で受賞している。ボクが田中小実昌サンの本を読んだのは、その後の数年間のことで、4〜5冊程度だったように記憶してい…

『Piss』室井佑月著(講談社文庫)

先日、新聞に載っていたとある書評を読んで、ちょっと興味を持ったので読んでみました。といっても、書評の本はエッセイだったので、やはり最初は小説を読んで見なくては、ということで身近な書店で見つけたのがこの本だったということで、特別この本である…

『カンバセーション・ピース』保坂和志著(新潮社)

長い本です。ページ数(字数)としての長さもさることながら、この人特有の饒舌体、しかもけっこうまわりくどくダラダラと書いていく感じがますますそういう印象を持たせるので、さらに実際の何倍も長く感じるわけです。しかし面白くないというわけではない…