2007-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『左腕の猫』藤田宜永著(文春文庫)

猫を小道具(?)に使った短編集。 実際にタイトルにもなった一編を読むまで、 “左腕(さわん)の猫”、と思っていたが、 勿論、よく考えればそんなはずはなく、 “左腕(ひだりうで)の猫”なのである。短編というと、無駄なものをできる限り 削ぎ落として成り…

『街道をゆく17』<島原・天草の諸道>司馬遼太郎著(朝日文庫)

冒頭の一文は次のようなものだ。『日本史のなかで、松倉重政という人物ほど忌むべき存在は少ない。』ここから一気にに引き込まれてしまうのは筆が熱いからだろう。 その熱さの底にあるのは“怒り”“憤り”の感情だ。理不尽なほど苛烈な年貢・租税の取り立てで、…

『海の仙人』絲山秋子著(新潮文庫)

出だしの“ファンタジー”の登場にはちょっと面食らう。 どうしてこんな奇異なものを、わざとらしいほどさりげなく登場させるのだ、という感じ。次第にその存在に馴染んでくると、重要で不思議なポジションではあるが、でも脇役だし、と感じられるようになって…