『アイス・ストーム』(テレビ)

何とも言えず、静かで、寂しく、物悲しい雰囲気。そしてそこが好きな映画。実は2〜3年ほど前にビデオでは一度見ているのだけど、もう一度見たいなあと思っていた。

あんまり時代背景は強調されていないのだけれど、ニクソンが出てくるテレビのシーンや、バックでかかっている音楽などで、70年代の雰囲気は多少伝わってくる。郊外に住む中流の一家族のそれぞれを描きながら、やはり全体として伝わってくるのは孤独感のようなものだ。夫、妻、兄、妹、それぞれが家族・家庭という居場所の中に落ち着きを見出せずに、他人のぬくもりと温かみをもとめて彷徨う姿は、見ていて痛々しいほどに孤独を感じる。

木立をゆらす風のそよぎ、落ち葉で埋まった水のないプールなどの何ということのない郊外の風景の切り取り方がとてもいい。ガムランのようなちょっとエキゾチックで無機質な感じの音楽も雰囲気にはよく合っている。

後半からクライマックスに向けては“キー・パーティー”という催しが、ちょっとした味付けになってくる。寄り集まったカップル(もちろん夫婦)が乗ってきたそれぞれの車のキーを、ひとつの大きな器にまとめる。女性が順にその車のキーを取り上げ、持ち主の男性と一夜をともにするという趣向だ。折も折、そんなパーティの夜にモーレツな寒波(アイス・ストーム)がやってきて……、ということになるのだが、この寒波の映像もまたなかなかの見ものだ。本当に寒そうで、冷たそうで、そして美しい。

ところで、見ていて思ったのだけど、夫婦ではなく不倫相手として共演しているケビン・クラインシガニー・ウィーバーって“デーブ”でも共演してませんでしたっけ? どうもあの強烈な夫婦ぶりが何となく印象に残っていて、最初はヘンな感じがしてしまいました。それから一度目のビデオで見たときはまだ知らなかったトビー・マグワイアが、その家族の兄の役で出ていたのにもまたびっくりでした。