2002-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『バッファローの月』加藤健一事務所(本多劇場)

僕が演劇を見るきっかけになったのは、もう20年近くも前になるけれど、この加藤健一さんの『寿歌』(ほぎうた)という舞台だった。核戦争が起きたあとの世界を描いた脚本で、小劇場の演目としては比較的有名なものの一本だ。それ以来、生身の人間がその時…

『ねじれた絆』奥野修司著(文春文庫)

沖縄で起こった赤ちゃん取り違え事件を長年にわたって追いつづけた、これぞまさにノンフィクションと言えるような本。 病院で出産し、我が子と思って育ててきた娘が、6歳になって他人の子であるとわかったとき、親は、子は、そしてまわりの人間は、いったい…

グローバル資本主義の幻想(下)『ケインズの誤算』佐伯啓思著(PHP新書)

できれば、6月15日(2002年)にアップしてある、上巻の分を読んでいただいた上で、こちらを続けていただけると幸いです。 実は、もう2週間ほど前に読み終わっていたのだけれど、きちんとした感想を書きたかったので、時間がかかってしまいました。この“…

『日本総合悲劇協会 業音』(草月ホール)

入り口のカメラチェックがかなり厳しい。その理由は……、主演の荻野目慶子熱演、ということ。それ以上はご想像にまかせます。毎回、松尾さんの芝居を見ると思うことがある。ひとつは、どうしてこれほどまでに“いかがわしく”“毒があって”“混沌とした”芝居を破…

『聖の青春』大崎善生著(講談社文庫)

将棋に興味がない人にとっては、まったく聞いたことのない名前だろうと思うが、村山聖(さとし)というプロ棋士を描いたノンフィクションである。テレビドラマにもなったので、そこで見た人も多いかもしれない。僕自身は中学・高校くらいに兄と多少指したこ…

『新・明暗』二兎社公演(シアター・トラム)

このところ色々な賞を受賞したりして、新聞に掲載された劇評などを見て、一度見てみたいと思った二兎社・永井愛という人の脚本による芝居。本当に初めて見る劇団であり、脚本家なのでどんな雰囲気のモノなのか、大変楽しみにしていました。 そして実際に見た…

『7days in BALI』田口ランディ著(筑摩書房)

バリを舞台にしたちょっとミステリアスな雰囲気の小説。路線は『コンセント』や『アンテナ』のような感覚だけれど、内容的には舞台となるバリ島に食われてしまったというところもあるか。本の作りを見れば、それはねらいとして意図されたもの、と好意的に解…

『放蕩記』佐藤正午著(講談社)

角川のハルキ文庫という中に収録されているらしいのだが、どこを探しても見つからず、図書館のお世話になることにした。少し前に読んだ『ビコーズ』と対になる作品。こちらが先で、『ビコーズ』がその続編にあたる。『ビコーズ』の方は、とても完成度の高い…