『人参倶楽部』佐藤正午著(集英社)

しばらくミステリー系とか深刻なテーマの本が続いていたので、この人の本を読むとなんともホッとして、懐かしい場所に帰ってきたような感覚。いいなあ、こういうお酒・日常・色恋ばっかりのお話。

“人参倶楽部”という所謂“クラブ”を舞台にした連作の短編小説集。マスターやお客としてそこに集まる男・女、そしてマスターの家族など、一つひとつの話で色々な人が語り手になるという形式がとられている。本当に狭い世界のことに終始するのだけれど、どれもとても愛しいという感覚をおぼえる。
そこに登場する人、そしてその人の想い、その行動、そしてその成り行き、そしてその結果……、どれもが愛しいのだ。人を好きになってしまうこと、そしてその想いゆえの言葉や振る舞いなんて、回りからみれば、なんでまあこんなになっちゃって……、というようなことが多いものだ。だけど、そんなことを感じている人もやっぱり自分がそういう気持ちを抱いてしまうと、やっぱり同じような立場にとって変わる。み〜んな、悩んで…、失敗して…、夢を見て…、打ちひしがれて…、そういう繰り返しを延々と続けていくのだなあ、と思うのでした。なんか本と関係ないような感想になったけれど、そういう気持ちを次々と呼び起こされる本ということです。。。