『青い夢の女』(ビデオ)

ジャン・ジャック・べネックスの『ディーバ』を初めて見たときのワクワクは、僕の映画体験の中でもとても好ましいものの一つだ。その後の作品も、二作目の『溝の中の月』以外はすべて見てきているし、そのどれも、僕自身はとても楽しめた作品だった。といっても1981年の『ディーバ』以来、今回の『青い夢の女』(2000年制作)で6作目という寡作な作家だ。

青い夢の女』は、とある精神科医のもとにミステリアスな女が(患者として)訪ねてくるところから始まり、その女との関係で巻き込まれたトラブルの顛末が描かれるというストーリーだ。
一歩間違えればドタバタコメディーになりそうな展開なのだけれど、僕の印象としては、ドタバタにならない緻密さと様式美のようなものが独特の世界を作り出していると見た。リアリズムの対極を行くようなその雰囲気(決して大袈裟ではない)が、見ていてとても心地よかった。

フランスの映画って、映像において部分的にとても原色が効果的に使われていて、それが画面の緊張感や緊迫感、そして感情表現においてもとても印象的だ。この映画でもそういう感覚が随所に見られて、それも見ていてとても気持ちがいい。
次の作品はいつ来るのかわからないけれど、できることなら、もっともっと切実なテーマを映像化して欲しいというのが僕個人の希望(というか願い)なのですが……。