2002-01-01から1年間の記事一覧
何とも言えず、静かで、寂しく、物悲しい雰囲気。そしてそこが好きな映画。実は2〜3年ほど前にビデオでは一度見ているのだけど、もう一度見たいなあと思っていた。あんまり時代背景は強調されていないのだけれど、ニクソンが出てくるテレビのシーンや、バ…
著者にとって大人の恋愛小説というジャンルに踏み込んだ最初の作品ということになるようだ。ちょっと特殊な世界(花材と花道)を舞台に、長い年月にわたる秘めた想いをじっくりと描いた読み応えのある小説だと思う。前にも書いた(かどうだか忘れた)けれど…
関東大震災は災害という出来事の意味で大きかったが、文学史の中でも近代と現代を分ける節目となっている。地震嫌いの谷崎潤一郎がこの地震をきっかけに、関西へ移住したことは有名だが、この『東京をおもう』という随筆では、そのあたりの経緯を含め、関西…
冒頭は恋愛小説かな、という雰囲気。ちょっと読み進むと家族や家系の要素も出てくる。そして下巻に入ってくるとミステリータッチでもあり、戦前戦後の歴史も絡んでくるという、盛りだくさんな小説。 文庫とはいえ、新刊だったのでわりと新しい小説だと思って…
一応読みきった。感想を書くのはちょっと気が重い。こういうのは書かなければいいのかもしれないけれど、とりあえず一人の読者として僕が感じたことは書いておきたい。 まずは、すごくたくさん売れたらしいし、“スゴい”とか“傑作”という感想も沢山読んだけれ…
スペインの映画で、2000年のアカデミー賞外国映画賞の作品。けっこう目まぐるしく展開するストーリーで、しかもそれがかなり盛り沢山な人間関係の中で起こるので、劇画っぽいなあ、と思ったりした。うまく理解してもらえるかどうかわからないが、昔売春…
下巻にはいるあたりから、一気にストーリーが大きく展開し、筋を追うオモシロさとともに、ヒロインである雅子の孤高なまでの強さを持った精神に感銘のようなものを受ける。実はこの作品より後に書かれた『柔らかな頬』を先に読んでいるのだが、そこで感じた…
まずは“著者:丸島儀一”ということについて、出版社である光文社に言いたい。「違うでしょ!」どうしてこの本の著者が丸島儀一氏なわけ? 読んでもらえば誰にでもわかるけれど、ちゃんと(取材・執筆・構成 福井信彦)と記してある。文章もその通り、丸島氏…
何のスペクタクルもないけれど、面白い映画は面白い。全然目立たなく公開され、終わってしまったようだけど、映画が好きっていう人はビデオで見ると楽しめる映画だと思う。処女作の評価だけで大学教授となり暮らしをたてているうだつのあがらない作家が、女…
週刊プレイボーイに連載(転載)していたエッセイをひとまとめにして単行本化したもの。1991年から93年にかけて書かれたものなので、丁度10年あまりを経過したものということになる。『ロス・アンゼルス暴動』、『マドンナの写真集』、『映画マルコムX』な…
いよいよこれで佐藤氏の小説全制覇か、と思っていたのだが、もう一冊『王様の結婚』というのがあった。この作品は著者の3作目、1985年の小説。面白さとしてはイマイチだったかなあ。何となくだが、書いている時のノリもちょっと足りない感じがする。会…
相変わらず読んでます、藤田さん。99年の作品ということなので比較的新しい小説。映画で言えば、いわゆるB級作品だが、B級にはB級の楽しさがある、というところだろうか。 ひょんなことから借金取りのヤクザと東京を散歩する羽目になった僕の、その2人…
どれもちょっとしんみり、泣かせる短編集。この人の物語を語らせる上手さには本当にうならされる。どれをとっても実によく出来ているなあ、という印象。短編というのを意識して、語り過ぎないところが特徴だろうか。ええっ、ここで終わっちゃうのか、、、と…
ハードボイルドのお手本のように読んだ、探偵“沢崎”シリーズに短編集があるのはまったく知らず、先日偶然古本屋で見つけたもの。大沢在昌とか北方謙三とかは、鬱屈したものをいつかは爆発させることを予感させる雰囲気があって、そこへ至るまでの抑圧された…
こういう怒涛のように圧倒的感覚にひたりながら読むことのできる小説にはなかなか出会えない。デビュー作『コンセント』を読んで、とても気に入った作家の一人だ。週イチのメールマガジン(こちらの方が有名か?)も購読している。この作品も『コンセント』…
いわゆる“市場万能”という考え方や“グローバル・エコノミー”のおおもととなるのは、アダム・スミスが示した経済学であるという認識が一般的である。著者である佐伯氏は、この認識について、スミスの代表的な著作である『国富論』(正しくは『諸国民の富につ…
どこにでもありそうで、誰にでもありそうな高校時代の一年間を描いた青春小説。思い通りにならないことだらけで、鬱屈し悶々とし、抑圧され、それでもそれなりのはけ口を見つけてはささやかに楽しむことができる、そんな18歳という年頃の雰囲気が読んでい…
この人らしい恋愛小説のひとつかな、と思って読み始めたのだけれど、ちょっと趣の違う小説でした。アブノーマルと言ってしまうほどの妖しい雰囲気ではないけれど、まあ、普通の人でもちょっと踏み入れてしまいそうな、軽いアブノーマルの雰囲気があります。 …
先日、中国瀋陽の日本総領事館に北朝鮮からの駆け込み事件があって、なんともタイムリーな本になってしまったが、実は一ヶ月ほど前にたまたまブック・オフの100円コーナーで見つけて買ってあった本である。奥付けを見ても、文庫版が出版されてちょうど一…
この人の本をあんまりメジャーになる前から、けっこう読んでました。もちろんコバルト文庫はパスしてますが・・・・・・。なんだか読むたびに、女の人ってこんななの・・・、みたいな感覚が面白くて。一番好きなのは『群青の夜の羽毛布』(幻冬舎文庫 )かな…
珍しく、本日展覧会に行ってきました。新装開店の国立近代美術館です。 どうしてこの人の絵が好きなのか、自分でもはっきり伝えることは出来ないけれど、どれを見てもいいなあと思う。毎年カレンダーを部屋にかけているのだけれど、ぜひ本物を見てみたいと思…
ある時期この作家の本は何冊か続けて読んでいたのだけれど、ちょっと飽きてしまって今回随分久しぶりに読みました。ある種のパターンから外れないところが、飽きられる危険を持つとともに、固定的なファンにはたまらないところなのかなと思ったりします。 僕…
短編5編からなる小説集。短編小説の定番といったところで、過度に入れ込まず、しかし程々には胸が波立つ感じがいい。雰囲気があって、余韻が残る『風鈴の女』が特に印象に残る。どれも面白く読めるのだけれど、読み終わって、思い返してみるとなぜか印象に…
久々の新宿鮫シリーズだ。直木賞受賞の4作目『無間人形』を最初に読んだあと、一作目から順に読んできた。ちょうどミステリーというジャンルを読み始めた頃のタイミングなので、かなり印象深いシリーズなのである。その後そこそこ面白いものの、イマイチ物…
どちらかというと寡作な人で、一応デビュー作から全部を読んでいる作家の一人。新聞広告でこの本の広告が掲載されていたのだが、著者の写真がいっしょに掲載されており、初めてご本人を見たのだが、作品の雰囲気が骨太のわりに、とっても線が細い感じだった。…
あちこちの書店に行く度にいつも探していたこの本が、やっと見つかって読むことができた。かなり長い小説だったので、ゆっくりチビチビと読むつもりだったのだけど、やっぱりあっという間に終わってしまった。この人の描く青春とか恋愛の雰囲気って、なんと…
待ちに待った3年ぶりのコンサート。今回もNHKホール。本当はサンプラザのほうが取りたかったのだけれど…。このツアーは、リマスターしてCDを再発売した旧作に因んでの昔の曲ばかりを選曲したコンサートだった。現在でも勿論聞いているけれど、80年代に…
3章立ての第一章は、主人公の少年が年上の女性に憧れ、そして恋をするところから始まる。タイトルとなっている“朗読者”の意味は、はっきり書かれてはいないけれど、この一章を読み進むうちに理解できる。二章、三章は何も書かずにおこう。その展開の驚きも…
1997年制作の韓国映画。今回見るまでは知らなかったのだが、本国ではかなりのヒット作だったそうで、インターネット・ブームのきっかけでもあったとのこと。アメリカ映画にもあったし、日本でも確かあったし、どこの国でも一本はあるということか、インター…
6篇からなる短編集。一つひとつに関連はないけれど、テーマは、タイトルにあるようなふとしたタイミングで見る幻や夢、あるいは空想・妄想のような感覚を描いたもの。 この人も、随分書くものの幅が広く、しかしなかなかのアベレージを残している作家だと思…