『永遠の1/2』佐藤正午原作・根岸吉太郎監督(1987年)(ビデオ)

昨年、本を読んだあと、どうしても映画化されたものも見たくなり、レンタルビデオ店などを探したのだが、なかなか見つけられなかった。ようやくYahooのオークションで見つけたものが、全然入札もなく300円で落札。ああ、オークションって有りがたいとつくづく思ったのである。

確かに想像してみても、レンタルビデオ店で最も借り手がなさそうな作品ではある。公開当時はあまり興味がなかったのもあって、映画は好きだったわりには全然記憶にない作品なのだ。とはいえ、主演の時任三郎大竹しのぶが色々な賞を取っているようだし、作品自体もキネ旬ベストテンの4位に入ってるくらいだから、それなりの反響や興行成績や評価もあったということだろう。

内容はというと、原作の大筋や雰囲気は踏襲しているものの、主人公の周りの人間やエピソードなどは、佐藤正午氏の他の作品から様々に持ち込まれているし、台詞もかなりシナリオにする段階で新しく作りこまれている。佐藤氏自身、エッセイにも書いていたと思うけれど、映画化権を売り渡したあとは、まったく口を挟まず自由に映像化させてしまう主義らしいから、こういう作品に仕上がったのだろう。

小説のほうには、もう少しユーモアの感じられる部分があったような感覚があるのだけれど、映画のほうは、(何と言ったらいいかな・・・)何か“倦怠感”あるいは“茫洋とした感覚”のようなものが漂う、ちょっと湿っぽいものがある。
ラストシーンも余韻があると言えば言えるが、“えっ、これでエンディング?”という物足りなさもちょっとあった。こういう雰囲気は、僕自身は嫌いではないけれど、こんなワクワクドキドキのない、スペクタクルもない、スカッとした爽快感も全然ない地味な映画は、レンタル店に置いてあっても、フツーの人には興味をそそられるものはないだろうなと、思うのだ。しかしまあ、小説も読んでないし、映画も見てない人にどちらかを勧めるなら、やっぱり原作のほうかなあ。