『活動写真の女』浅田次郎著(集英社文庫)

甘酸っぱい青春、どこか懐かしさを感じさせるような郷愁、さらに恋愛、ミステリーと様々な要素をうまくブレンドして出来上がった小説らしい小説とでもいったらよいだろうか。
前にもこの人の小説のところで書いたような気がするけれど、うまいなあと思う。そして上手すぎるくらい上手いけれど、あざとくならないぎりぎりのところで出来上がっているのだ。

この小説のもうひとつの主役は“映画”というメディアの盛衰の歴史だ。映画が多少なりとも好きであれば、そのへんの知識欲までちょっとくすぐられるところも魅力のひとつだろう。