『ニュー・パラダイス・タウン』離風霊船(ザ・スズナリ)

小さなスズナリの座席が、当日券含めこれでもかというほどいっぱいであった。最近の2本を見落としているので、僕にとっては久しぶりの離風霊船公演。

秩父のそのまた山奥を突然開発して出来上がった“ニュー・パラダイス・タウン”。当初の計画がまったくの誤算に終わり、わずかに数える家族だけが残ったそのニュータウンでおこる騒ぎと、その家族達が選択した“最期”とは・・・。というのが簡単なストーリー。

離風霊船の持ち味は、超現実的で不可思議な状況における人間を描き、手作り感覚の一点豪華主義的セットの何ともいえない味わいにあると思っている。今回もそんな特徴はよく出ていたが、内容的には今一歩削ぎ落とされていないというか、スペクタクル感に欠けるという感じもあった。劇団のメインであった人達が次第に抜けて、役者のパワーが今ひとつという感もあり、好きな劇団だけになんとか盛り返してほしいと思うのだが・・・。今の状態で見ると、やっぱり伊東由美子さんの存在感が圧倒的。古株の小林さんは別として男優の線が細い。

現実の事件や事故を題材にそれを特殊な角度から掘り下げてきたという、劇団のテーマ的な持ち味を考えると、その現実があまりに混沌とし作り物の世界を超越してしまったこともあるのかなあ、と思ったりする。いくつも好きなレパートリーがあるけれど、それを超える次の一作をまたぜひ生み出してほしい。