『ダーク』桐野夏生著(講談社)

デビュー作から続くミロの物語。今回で何かしらの完結を見るのかという思いがしていたのだけれど、最後まで読んでみると、このままでは終わらないなという気がする。そのデビュー作から1〜2作を除いてほとんど読んできていて、先日も『OUT』のレビューで書いたように思うけれど、『OUT』と『柔らかな頬』の二作を読んで、その何とも言えないナマナマしくザラザラした感覚に魅かれている。本当になんと言ったらいいのか難しいのだけれど、今までどんな文章を読んでも味わったことのない、触れてはいけない剥き出しのものに触れたような感覚・・・・・・、とで言ったらいいのだろうか。そしてそこに触れた感覚は、どこか気味が悪いけれど、再び触れずにはいられない禁断の快感のようなものだ。

ネタやストーリーについては、何も語るまい。その不思議な感覚と共に味わうべきものだから。
聞くところによると、ミロの物語は『OUT』だったか『柔らかな頬』のどちらかで書き始められたものだったらしい。そして、どんな理由かはわからないけれど、結局それらの作品はミロのもとを離れ、まったく書き改められて別の物語として完成されたのだそうだ。
いつかは、またこの続きの物語としてこの不思議な感覚を味わいたいと思う。

ところで、内容はさておいて、本の仕様についてひとこと触れておきたい。読み始めの最初の1ページをめくった時に、本文の用紙の厚さにちょっと驚いた。もちろん中を開く前に買う時点で、本そのものの厚さには驚いたのだけれど、これはちょっと“上げ底”みたいなモノじゃないか。本の厚さをインパクトにするように意図したのだろうけれど、それを厚い紙で実現するというのは、あまり感心しない。
ちなみに細かいハナシになるけれど、つい先日読んだ『海辺のカフカ(上巻)』と比較してみた。『海辺のカフカ』と『ダーク』は1ページあたりの文字数(字詰め)が43字×18行の774文字でまったく同じ。『海辺のカフカ』のほうが、本文397ページで、表紙込みの厚さが22ミリであるのに比較して、この『ダーク』は、519ページで厚さは47ミリであった。仕様を『海辺のカフカ』と同じにしてみたら、恐らくは27ミリの本になったということだ。これを仕事の行き来に読むのはツラかったぞ。というか、どうせなら『海辺のカフカ』の体裁で47ミリくらいのボリュームがあればもっと嬉しかったのに・・・・・・。