『バニシング・ポイント』佐藤正午著(集英社文庫)

バニシング・ポイント』というと、まず思い浮かべるのは映画。ただの賭けのためにハイウェイをただひたすら走るというストーリーで、ラストがあまりにあっけなくカッコイイ。ちょっとヘンな映画だけど、ボクにとっては結構お気に入りの作品だ。もうテレビでやることもないだろうし、レンタルビデオ屋さんででも借りないと見られないだろう。ビデオ屋さんにもあるかどうか…。

作者は確か映画好きだったはずだし、どこかその映画を意識したところがあったのか気になった。読み終わったところで考えてみたが、どうも関係はないように思う。

この作品、謎が多くてすっきりと解明できない。読み返してみようかと思ったり、登場人物を表にまとめてみようかと思ったりもしたのだが、そこまでの意欲はわかない。でも、つまらなかったのかと言われると、そうとも言えないところがちょっと複雑。僕は基本的につまらない本は、つまらないと思った時点ですぐに投げ出してしまい、がんばって最後まで読むことはしない。
ストーリーとしてはよくわからないまま、それぞれのシーンが面白くて結局最後まで読んでしまった。そんなところだろうか。男と女の様々な関係が、ひとつひとつの物語として語られる。決して幸せな関係ではない。短編集のような形式だが、登場人物の関係やそれぞれの話の関わりを考えると、一話ごとに完結する単なる短編集とは言えない。といって、一つのストーリーが各編を通して流れていくというものでもないし、特に何かでクライマックスがあるわけでもない。ありそうでいて、なさそうな、男と女の、出会いと別れと、そして消滅の物語。