『官僚組織の病理学』草野 厚著(ちくま新書)

新書ブームがけっこう続いている。話題になる本も多いし、新書シリーズの創刊も続いている。ちょっとした知的好奇心というのを満たすのにちょうどいいレベル(サイズ)なのかっていう気もする。別に意識してこういうカタい本を取り上げているわけではないです。時々こういう本も読みたくなるのです。

様々な事件に例をとり、官僚組織のどこに問題があるかを追求するという形式でまとめられている。それぞれはもっともだし、指摘している内容も確かだとは感じるんだけれど、常々僕が問題思うのは、仕事に対するもっと根本的な意識・姿勢の問題ではないかということだ。つまり“行政改革”なんて言っているけれど、本当に改革するのはその組織でも体制でもなく“意識”だということ。誰のために仕事をしているのか、何を目的として仕事をしているのかということを考えることを真っ先にしてほしいと思うのだ。色々な要求や要望に対して、ほとんどの場合こうだから出来ないという出来ない理由探しがまず第一にあることが問題なのだ。そしてそういう理由があればそれで済まされてしまうということも。ふつう企業でも一人ひとりの人間でも、どうしたいこうしたいという希望があれば、どうしたらそれが実現可能になるかという方法を探すものだ。出来ない理由を探してあきらめてしまっては何の進歩もない。小泉さんも田中外相他にナントカ心得10か条とかっていうのを配ったとかというニュースがあったけれど、本気で行政改革なんてことをやるつもりがあるのなら、お役人たちにもそうした根本的な心得を説くような文書でも配布してはどうだろう。

ということですっかり話は逸れてしまいましたが、ちょっとした知的好奇心を満たすにはいいけれど、それなりというところでしょうか。もっと“渾身”の著作というのを期待したいという物足りなさを感じてしまいました。