『ぼろぼろ三銃士』永倉萬治著(実業之日本社)

一昨年亡くなった永倉萬治さんの没後出版された遺作のひとつ。未完の作品を奥さんが書き継いで完成させたということで新聞の図書欄などでも取り上げられていた作品である。

わりとマイナーな作家だったが、その作品の雰囲気が好きで、かなり前からのファンなのだ。いつ頃から読み始めたのかがあまりはっきり記憶にないが、現在家にある本の奥付を見てみると、一番古い『移動遊園地』が1993年、『荒木のおばさん』が1995年、『四重奏』が1996年となっている。だいぶ処分してしまった本もあるし、図書館で借りて読んだものもあるが、作品集として出版されたものは大体読んでいると思う。

知っている人は知っているだろうが、脳出血で倒れたところからリハビリをしつつ立ち直って、その状況をいくつも作品に発表している。ちなみに僕が一番好きな作品もそうした中のひとつで『ラストワルツ』という作品だ。

とにかく愛すべきダメ主人公が登場するその独特な雰囲気がこの人の特徴だろう。この作品でもリストラされた昔の同級生3人が、ひょんなことから出会っていっしょに旅をしたりするユーモア溢れる小説だ。最後だからということでもないのだろうが、とにかく今回はこれでもかというほどのサービス精神で、とことん楽しませてくれ、大団円という雰囲気だった。もうひとつの遺作『これで おしまい』(集英社)のほうが、どちらかといえばお勧めだが、最後にこんな素敵な作品を書いて逝ってしまった人間味溢れるこの作家を、もっともっと多くの人に読んでもらえたらと思うのである。