『もうひとつの季節』保坂和志著(朝日新聞社)

1998年の秋、朝日新聞の夕刊に連載された小説ということだ。僕は実のところ今まで新聞の連載小説というものを読んだことがない。文芸誌なども決まって購読しているものはないので、雑誌の連載小説というのも読んだことがない。どうもそういう読み方が出来ない人間なのだろう。
もしも佐藤正午さんが新聞連載小説を書き始めたら読むだろうと思うが・・・。1998年当時、保坂和志さんについては、芥川賞作家ということだけは知っていたと思うが、ほとんど興味がない作家であったので、当時たぶん朝日新聞も取っていたと思うのだが、まったく記憶にない。

この『もうひとつの季節』も、いかにもこの人らしい、何も出来事らしい出来事が起きない淡々とした小説である。この人らしさ、といえば、理屈っぽいところやネコにまつわる描写や物語の展開などは、いかにもこの人らしい。そして、そんな中で、珍しく最後の部分にはちょっとしたヤマ場がある。そのヤマ場を超えてプツンと切れるように終わってしまうところが、またサービス精神の無さとして、なんとも印象に残る。