『ゴロヴリョフ家の人々』永井愛脚本・演出(新国立劇場小劇場)

これで3本目となる、永井愛脚本作品の観劇。たまたまということもあるのだろうけれど、題材として扱われたものが3本とも、まったく異なるのだけれど、どれも実に面白いものばかり。演出はどれも地味なのだけれど、話の展開と会話の面白さは、本当に群を抜いていると思う。

今回の作品では実は楽しみにしていたのは、舞台で始めて見る加藤治子さんとすまけいさん。いつかはナマで見てみたいと思っていた二人が同時に見られたのもとても嬉しいことだった。そしてどちらも何ともいえない味のある役者だったという感想。
昨日が楽日だったから、多少のネタバレもよいだろうか。多くの農奴を抱えたロシアの貴族の一家族が、自らの堕落や農奴解放という歴史の中で一人、また一人と亡んでいく様が語られる。悲劇的な展開の中にも、会話や演出で可笑しみのある科白や場面も展開する。

最後は、この一家を最初に取り仕切っていて、夫ばかりか、自分の息子や孫までも失ってしまった母親(加藤治子)の亡霊に、その情に薄く欲が深いという母親の性格を最もよく受け継いだ長男がすがるという幕切れ。
その前の場面で語られる、このまま滅びるよりも“もうひとつの別の扉もある”という言葉と相まって微妙に複雑なラストとなっていた。芝居を見た者には希望の火を灯しつつも、物語の結末としては一家がすべて滅びるというように見たのだが・・・。