『ローズ・ガーデン』桐野夏生著(講談社文庫)

シリーズ物として続く村野ミロを主人公とした短編集。シリーズの内容として長編にならない題材を短編にしたかな、と思われるようなものと、まさに番外編的なちょっと趣の異なるものとが入り混じっている。そしてどれもなかなか面白かった。
4編のうち3編は1993年から94年、95年と続けて発表された作品で、一編だけが2000年の単行本発刊時の書き下ろしだ。最初の3編はあきらかにシリーズものの最初の頃の雰囲気があり、最後(といっても収録は冒頭に置かれた)一編は、『OUT』など以降の、著者自身の意図したであろう文体や感覚の変化が見られて興味深くもあった。
昨年『ダーク』が出たばかりだから、続編の話はまだ先になるかもしれないが、いわゆる探偵モノという枠から大きく飛び出した物語が、今後どんな展開になっていくかは、とても楽しみにしているのだ。

初期の頃に書かれた3編は、いずれも新宿あたりを舞台にして、その猥雑な風俗を背景にしている。こんな雰囲気の短編はもっと読んでみたいし、NHKあたりでドラマ化してくれたら、なかなか面白いものになるだろうなあと思う。映像化するとして、主人公のミロを演じられるのは、どんなタイプの女優だろう。