『Sweet Sixteen』(新宿武蔵野館)

映画を見る場合、ボクはできるだけ事前に何も情報を入れないようにして見たいと思っている。最近は映画もドラマも、“見どころ”などとと称して公開前におおかた解説や映像を丁寧に教えてくれたりすることがあるけれど、見たいと思う映画ほど、できるだけそうした余計な情報を入れずに、その作品だけを自分の目で見て楽しみたいと思うのだけど、そういうことを思うのは変わっているだろうか。この映画については、一度だけTVのCMを見たのと、新聞の批評欄に取り上げられていたものを見ていた。

15歳の少年リアムは友人のピンボールと学校にも行かず、タバコ売りで小銭を稼いでいる。父親はなく、祖父と母親の彼氏とで、刑務所に入っている母親の出所を待つ日々だった。しかし、本当に母親のことを考えているのは自分だという自負を持ち、出所したらそこに戻らずに別の住まいで母親と暮らしたいという思いから、タバコ売りから儲けのいい麻薬の売買に鞍替えし、商売に励むことになる。元締めのボスからは認められ、念願の住まいも手に入れることになり、母親の出所を迎えられたのだけれど、そこで、リアムが望んでいた暮らしが実現することはなかった・・・・・・。というところがざっとのあらすじ。

クレジットではイギリス=ドイツ=スペイン合作ということになっているけれど、一本限りのプロジェクトであるようなので、資金が出たのが三カ国ということで、内容的にはイギリス映画として見ていい内容だと思います。
地味な映画です。ちっちゃな映画館のちっちゃなスクリーンで見るのにちょどいいような内容と言っていいかもしれません。リアムを演じる役者が、この映画にぴったりの雰囲気でいいし、映像も音楽もヘンにおしゃれだったり、必要以上に凝ったりたりしていないところもよかった。監督がケン・ローチということで、わかる人にはわかるのだろうけれど・・・。
ストーリーに関しては、結末は言えないけれど、ちょっと残酷(というと言葉が過ぎるかな)です。タイトルの“Sweet”は、母親と暮らすことを夢見る16歳の自分ということのように思えます。そして実際の物語は、そんな気持ちの裏返しというところでしょう。どんな状況でも、商売の上では大人びた行動をとって上手く立ち回ってきたリアムが、母親に対する気持ちはやはり15歳の少年のものであり、それが悲しく残酷な結末をもたらしたというように見ました。エンディングはちょっと唐突だった気もしたけれど、苦さを余韻に残した終わり方です。(後味が悪いという意味ではないので誤解のないよう・・・)