『売り言葉』2002年2月16日(スパイラルホール)

野田秀樹さんの作・演出で大竹しのぶさんの一人芝居。題材は『智恵子抄』の智恵子。
一人芝居を演じるパワーって、ほんとに大変なものだろうと思うのだけれど、それをパワフルに、しかしケロッとやってみせるところに大竹しのぶさんという女優のすごさを改めて感じた。かなり昔からのファンで、僕が自分で自らチケットを買って始めて芝居というものを見たのは、もう二十年ほど昔のこの人の舞台だったと思う。今となってはタイトルも忘れてしまったけれど、確かサンシャイン劇場で、今はもう亡き尾上松禄さんとの共演だっただろうか。もう自分の記憶からもすっかり無くなっていたそんな事を、今日の芝居を見ながら思い出していた。

高村光太郎と智恵子の関係、そして智恵子が精神的に狂っていく様子、その背景などが芝居になっているのだが、ふだん大所帯で演じられる野田作品と違って、とてもストレートでシンプルな舞台だ。もちろん一人芝居ということもあるのだろうけれど、脚本家としての枠がまだまだ拡がっていることを感じて、新しい部分を発見できたような喜びもある。

雑記ですが、会場でもらった小さなパンフレットに野田×大竹対談が掲載されている。それによると大竹しのぶさんは初日にもまったく上がらずに舞台に立つのだそうだ。スゴイですね、根っからの女優というのでしょう。ちなみに野田さんは二日目からは楽しいけれど、初日だけは上がると言っていた。
スパイラルホールは二度目だが、純粋な芝居で行ったのは始めてのこと。やはりちょっと見づらい感じはある。たまたま席が真ん中へんで、傾斜がなかったのもあるけれど、できることなら同じサイズくらいのところでちゃんとしたホールで見たかった。
それから、一つだけ気になったんだけれど、エンディングについてはちょっと疑問が残ったというのが正直な感想。ネタばれにはできないので、詳しくは書けないが、台詞の終わりですんなりエンディングにしてもよかったと思うんだけど、どうだろう。