離風霊船公演『オリジナル』(東京芸術劇場)

離風霊船は僕の中では、何かちょっと特別な存在の劇団だ。出ている人たちに何か特別の親近感を覚えるのである。何故なのかと考えてみても理由がわからない。もちろん知っている人がいるわけでもない。とにかく劇場に足を運んで、客席から演じる役者一人ひとりを見た時に、ああ、元気でやってる、ということにわけもなく嬉しくなってしまう劇団なのだ。

初めて見たのが何だったかは忘れてしまった(たぶん『ラジャ』だったようにも思う)が、けっこう長いこと見続けてきた劇団である。大好きで何度も見た芝居もある。今回は大橋さんの久々(ですよね)の新作だが、ここの特色である、ある不可思議な設定の中に放り込まれた人間たちをテーマにしたものだ。

今回のテーマはさまざまな事件や事故などで、無念にも命を落としてしまった人たちのことと言っていいだろう。地下鉄日比谷線の脱線接触事故、歌舞伎町の雑居ビル火災、浅草での通り魔事件・・・。そこで命を落とすことなど、おそらくは考えることもなかったであろう人達が、突然の出来事によってフッとあの世に連れ去られてしまう。そんな被害者の魂の彷徨いが描かれていくのだ。そうした痛ましい事件や事故はまったく日常のことのようにくり返されている。そしてそれがあまりにも頻繁に起るので、僕らはその事件や事故で命を落としてしまった被害者の無念さにまではあまり思い至らない。そうした死者の思いを掬いとって、その無念さにもっと思いをめぐらせてもいいのではないかということを感じさせてくれたように思う。

今回ヒロインを演じた相川倫子さんは、芝居に出始めた頃の初々しい姿を思い出すと、随分と成長したなあと感じる。今回の役は随分と難しい役だろうと感じながら見ていたが、熱演だった。華のある部分がもうちょっと出てくれば、もっともっといい役者に成長するように思う。