『曽根崎心中』(練馬文化センター)

地元のホールで文楽が見られるということで、平日の際どい時間ながら観劇。
実は文楽初体験であった。歌舞伎も一時期、年1〜2本見ていたのだが、ここ10年くらいはご無沙汰である。あの義太夫の節回しというか語りは、慣れれば聞き取れるし意味もほぼわかるのだが、普段見て聞いていないと、聞き取ることができるようになるまでちょっと時間を要する。
今回は、地方公演という扱いなのか、開演にあたって義太夫のちょっとした解説があって、雰囲気には入り易かった。歌舞伎も本当に初体験ならば、毎年行われる国立劇場の歌舞伎教室から見始めることを勧めるけれど、文楽もこうした公演からはいるのがいいのかもしれない。

さて、『曽根崎心中』。全段でどれくらいの物語になるのかわからないのだけれど、今回見たのは『生玉社前の段』、『天満屋の段』、『天神森の段』ということで、最後の心中場面までの部分。全体を見た印象は、人形の動きというのは実はずい分控えめなものなのだなあ、というものだった。
最後の心中場面、脇差の刀でお初を刺し貫くという場面は、その動きの見事さに思わず目を見張った。ここだけは三味線も語りもいっさいの音が止んで、客席の息を呑むような雰囲気が感じられ、印象的な幕切れであった。