『ギャンブラー』加藤健一事務所(本多劇場)

昨年10月の公演『バッファローの月』に続く新作。今回も翻訳モノのコメディーでよく出来た舞台という印象。大変楽しめた作品でした。
グリーティングカードに添える詩を作るしがないライター稼業の主人公が、趣味でやっている競馬予想が脅威の的中率であることから、ひと騒動が生じる。というわりと単純なストーリーなのだけれど、回り舞台を利用した場面の転換もアクセントにして、主人公を含めひと騒動に関わる人達の面白可笑しいドタバタぶりが楽しい。
ギャンブルにまつわる物語だけに、次第に欲望渦巻く・・・という状況になっていくわけだけれど、そうしたあたりは笑いでつつんでアクが強くならないようにもっていくところ。最後も気を持たせつつ、ハッピー・エンディングに締めくくるところ。なんか本当に気持ちよく安心して見られて、“あー、面白かった・・・”と劇場を後に出来る芝居らしい芝居とでも言うことが出来るかな。

それにしても加藤健一さん、最近はすっかりオバサンファンが固定したなあ、というカンジ。ボクが見始めた頃は、演目の幅も広かったしもっと若い人も多かったと記憶しているのだけれど、このところの路線は、ちょっと落ち着いた中年から上の世代というところにターゲットを置いているように思えるし、それが確実に固定したお客を集めていると思える。
今回の登場はいきなりビシッとキメたダブルのスーツに、オールバックの髪型でサングラスという、今までにあまり見ない雰囲気だったので、登場しただけで受けをとって会場がわいたのだけれど、これなどは完全にそうした客席の固定客のリアクションだったと思う。考えてみればそうした年齢層をターゲットにした小劇場の芝居というのは、今のところあまりないわけで、これから貴重な存在ということになるのかもしれない、と、そんなことも思ったのだった。