『彦馬がいく』(PARCO劇場)

今年初めてのお芝居は三谷幸喜さんの『彦馬がいく』でした。東京サンシャインボーイズの頃の作品ですが、劇団での上演当時はあまり興味をもっていなかったので、今回初めて見ました。いくつか見てきましたが、感じるのは三谷さんの芝居というのは、サービス精神が旺盛で、とにかくとことん楽しましてくれるということでしょう。今回も休憩をはさんで85分と90分、合計175分間をまったく飽きさせず、しっかり楽しませてくれました。

ストーリーは、幕末の頃に写真館を始めた一家を中心に、当時の著名な藩士達が色々な形で関係していくことで、一家のドラマと時代の流れが描かれていきます。ご本人自らがシチュエーション・コメディと書いていらっしゃいますが、一つの場所を舞台にしながら、話の展開や時の経過の描き方がとても巧み。会話のやり取りのオモシロさ、言葉の間合いの微妙なオモシロさは、本当にこの人の独壇場という気がします。登場人物一人ひとりのキャラクターもとてもはっきりしていて、演じる俳優たちもとにかくウマい。PARCO劇場というそんなに大きなハコではありませんが、私が今回見た後ろから二列目という席でも、台詞がとてもしっかりしているのがとても嬉しかったです。そんな中でも特にナレーションの台詞も多く、事実上この芝居の進行役と言える筒井道隆さんと、桂小五郎役でピッタリはまった梶原善さんはとても印象に残りました。