THEATRE1010開館記念公演『楡の木陰の欲望』(THEATRE1010)

北千住の再開発された新しいビルに出来たホールに行って来た。といってもそれが目当てではなくて、勿論芝居そのもの、そして女優寺島しのぶ、演出ロバート・アラン・アッカーマンという取り合わせに興味を持っての観劇。

ユージン・オニールという劇作家は、若い頃かなり波乱のある生活というか放浪を経て、その後に作家生活に入ったらしい。この作品は36歳の時の作品ということになる。ギリシャ悲劇を下敷きにしたと言われるこの作品は、確かに冒頭からしばらくの印象は“骨太”という感じだった。

どんな人間も、その内面を一皮剥いてみれば、そこには悲しいほどの醜さや浅ましさ、ドロドロとした欲望や憎しみ・・・、そんなものが見えてくる。もう一皮剥くとそれがもっとはっきり見えてくる。じゃあ、さらにもう一皮剥いたら・・・、と、そんなようにして“どこまで剥けるか”をとことん突き詰めたらどうなるんだろう、というのがこの戯曲テーマなのかという印象を持った。
救いがないような悲劇的結末の中で、たったひとつ残った“愛”を余韻に持たせたことで、ホッとするようなエンディングだった。初めて舞台で見た寺島しのぶは、これはもう圧倒的な存在感を感じさせた。やはり見逃してしまった『赤目四拾八瀧心中未遂』の映画は見なければ、と思わせられる。

さて、劇場は、思ったより規模がこじんまりしていてなかなかよかった。駅から近いというのも何よりのポイントだ。小さめな割に扇型の横の広さがあって演劇向きのホールという印象。たまたま2階席の一列目中央という席だったのだが、舞台全体に二階家をしつらえた今回の演出では、もしかすると一番いい席だったかもしれない。